社会貢献活動
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弊社会長であり 社会福祉法人清穂会理事長である 臼井清三の |
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<巻頭言> 障害を乗り超え、ひとりの働き手に
日本ウエストン(株) 会長
社会福祉法人清穂会 理事長 臼井清三 20数年前、私の目の前に一人の精神障害者の姿がありました。当時はまだ会社を創業し間もない時期でもあり、障害者の雇用などとても考えられない時でした。色々ないきさつの上、やむを得ずお引き受けすることになったのですが、この一人の障害者とのかかわりが、後に精神障害者の福祉工場開設の動機になろうとは思ってもいませんでした。 今まで何人の障害者とかかわってきたのでしょうか。そのお一人おひとりに、仕事よりまず“幸せになってもらいたい”、この一念で今日まで”ざるで水をすくう”ような事を繰り返してきました。この小さなことの繰り返しの継続が大きな力となり、清穂会という「バケツ」にいっぱいの水を得ることが出来たと思っています。 「だれにでも出来ることを、だれにでも出来ない程繰り返す」この事の大切さを障害者と共に実践することが出来たことを感謝しています。 こんな歌を詠んだ方がいます。 「つつましく 脱ぎそろえられたる ちいさき靴 脱ぎし心に 頭下がりぬ」 幼い子どもの心にどこにこうした慎ましい心が潜んでいるのでしょうか。 “周りをきれいにすることで人の心は落ち着くはずだ”との信念で「掃除」という活動からはじめました。 工場の中でいやなことがあってトイレに行ったとしましょう。トイレのスリッパが散らかって足の踏み場もなかったら、人の心はますます荒んでいくことでしょう。逆に、いやなことや耐えがたいことがあったとき、履き物がきちんとそろっておりトイレの中がピカピカであったとすれば、それだけで心はぐっと落ち着くと思ったのです。 「掃除」という活動を始めてから“整理整頓、掃除が出来ていなければ仕事は遅れても良い”こんな指示を出し、私を含め全社員の受け持ち場所を細かく決め、徹底して行ってきました。月曜日は通常より30分早く出勤し掃除をしてから仕事に入ります。月一回の土曜日は会社の中はもとより、廻りの道路まで掃除を行ってきました。 掃除を徹底してやり続けることにより、自分の心をも磨く。人間の心なんて磨けるものではないけれど、長く続ければ、知らず知らずのうちに心を磨くことになり、今まで傲慢だった人が謙虚になって、細かいことにも「気づく」性格に変わって行きました。また、それまで何ごとにも無感動だったような人が感動を覚える人になっていたのでした。 人間は、幸せになったら感謝する心がわくと思われていますが、感謝する心を持つから幸せを感じるのだと思います。 そうこうしているうちに、いつしか全従業員の半数以上を占めることとなった障害者が活動している企業になっていました。 徹底した掃除を通して躾を行ってきたのです。一般社員に対して「障害者の行いを見なさい。あんなに決められたことを決められた通りきっちりと出来ているではないか。どうして君たちが出来ないのだ。障害者を見習いなさい。」いつしか、こんな言葉が出るまでになっていました。 そうした活動の延長線上の中でISO14001環境マネジメントシステムを構築し、その認証取得を果たしたのです。 「障害者がこんなに多い企業がどのようにしてISOを取得できたのですか」とよく聞かれます。何も特別なことを行ってきたのではありません。障害者にそれぞれ清掃範囲を決めて掲示するなど役割をはっきりさせ、全員参加の活動を行ってきた賜物です。 単に認証取得だけを目的とするのではなく、企業体質を改善し、仕組みを変え、障害者を含めた全社員が環境教育を通して、障害者が一般社員と共に伸び伸びと参画していける企業を目ざしてきたのです。 平成14年4月、社会福祉法人「清穂会」の福祉工場「せいすい石谷工場」の竣工式が、岐阜県石谷で行われました。東海地方では初めての福祉工場のオープンです。この福祉工場は、企業などで働く技術や能力を持ちながら、精神障害のため人間関係を築けない人たちが働くための施設です。そこで精神障害者のための相談窓口である地域生活センター「ザールせいすい」も付設したのです。 一方、現在企業における障害者雇用の拡大を図ることが各方面で求められていますが、昨年12月に財団法人岐阜県産業経済振興センターのもと「岐阜県障害者雇用促進のための基礎調査」の研究会が設けられ、私も研究員の一員として参画させて頂き、岐阜県内事業所2000ヶ所を対象にアンケート調査を実施しました。その時のデータの一部をご紹介します。
表1-2 知的障害者雇用に対する関心(雇用の有無別)
表1-3 精神障害者雇用に対する関心(雇用の有無別)
障害者の雇用に対する関心をみると、身体障害者に関しては「大いにある」「少しある」を合わせて23.7%の事業者が何らかの関心を示しているのに対して、知的障害者では、7.7%、精神障害者では、4.1%と関心の低さが示されています。 このデータが示すように、国が職業的リハビリテーションあるいは、ジョブコーチの充実等で雇用の促進を図ろうとしていますが、まだまだ企業の関心の低さが見られ、障害者特に精神障害者が一般企業に雇用されることが難しいことが実感されます。 “せいすい石谷工場”は永久就職の場ではなく一般企業への通過点であると私は考えています。 いつかきっと「さすが清穂会の卒業生ですね」と言われる人たちを世の中に送りたいと考えております。「私を育ててくれたのは清穂会です」と胸を張って堂々と自立し障害を過去のものとしてくれることを願い、今日も指導員と心を一つにして頑張っています。 |